独身時代に踏み倒してて放置していたサラ金から、何年もたった後で、債権回収業者などから民事裁判で訴えられた場合、消滅時効で債務は消滅している可能性があります。
しかし、訴状が届いているのに放置すると、時効で消滅を主張できるはずなのに、欠席裁判で敗訴し、差押えを受ける恐れがありますので、必ず対応しましょう。
自分で簡単に対処できますので、必ず、放置しないで対応しましょう。
このページを全部読めば、必要な対応はできます。裁判所から届いた封筒に「答弁書」のひな形が入っていたはずです。この答弁書の書き方も、出し方も、全部説明します。
落ち着いて、このページに書いてあることを全部読み、実行してください。
ちなみに、このページのとおり実行しても、時効が成立していなければ、ダメなときはあります。この場合、たいてい、弁護士に依頼しても同じです。
時効が成立してない場合は、基本的に支払うしかありませんが、裁判所で和解をして、分割支払の条件で和解をしましょう。放置して判決を受けてしまうと、元金と多額の利息がそのまま認められてしまいます。和解なら、利息はカットしてもらえるかもしれません。
なお、借り入れに身に覚えがないなら、弁護士に相談した方がいいです。この場合は、根本的に、支払義務を争うことができる可能性があるからです。
消滅時効の要件
消滅時効とは、債権を一定期間放置すると、時効で消滅してしまい請求できなくなるというものです。
消滅時効の要件
1 権利を行使できる状態になったこと
2 その時点から時効期間が経過していること
3 その間に、「時効の中断」がないこと
4 時効の主張をすること(「時効の援用」といいます)
サラ金の借入の場合、時効期間は5年です。
この5年は、支払できなかった返済期日から起算します。その時点で、期限の利益を喪失し、全額の返済期日が到来したことになり、「権利を行使できる状態になった」といえるからです。
ただし、この5年の間に「時効の中断」が発生していると、時効の主張はできません。
時効の中断とは、次のような場合です。
1 訴訟上の請求があった場合
2 債務承認をしてしまっている場合
※ 請求書が届いていただけでは、時効の中断にはなりません。
訴訟上の請求とは、民事裁判や支払督促など、裁判所を利用した請求手続きがとられたことをいいます。債務承認は、読んで字のごとくですが、債務の一部の弁済も債務承認に含まれます。
余談ですが、5年経過して消滅時効の主張が可能な状況になった後でも、その後に、一部弁済をしてしまっていると、時効の利益を放棄している等の理由で、時効の援用権を失ってしまうというのが判例です。
この理屈を逆手にとって、時効が成立しているはずの貸金債権を、あの手この手で、債務者に1000円でもいいから一部弁済させた後で、態度を一変させて、全額と長期間の遅延損害金の請求をするような貸金業者も存在します。このような場合でも、一応争うことはできなくはありませんが、弁護士への相談が望ましい状況になります。
時効になっているかどうかの確認
時効期間の経過は、比較的判断が容易です。
しかし、中断事由の有無は、自分の知らないところで、支払督促や訴訟が提起されていた場合がありえます。
実際に、弁護士として受任した事件で、サラ金業者に時効の援用をすると、時効が成立する場合が多いのですが、2~3割くらいの確率で、時効中断事由が反論されたりします。
ですので、時効の成立の有無は、事前には100%判断できません。
なので、時効の主張は、とりあえず言ってみるしかない、ということになります。
答弁書の書き方
訴状と一緒に送られてきた書類の中に、こんな感じのひな形が入っていたはずです。ちなみにこれは仙台の裁判所のひな形。
http://www.courts.go.jp/sendai/vcms_lf/20305001.pdf (ひな形)
http://www.courts.go.jp/sendai/vcms_lf/20305002.pdf (記載例)
もう少し実践的な記載方法を補足します。
答弁書のスタイルは、裁判所によって少しずつ異なりますが、内容的には、ほとんど同じです。
答弁書に「私の言い分は次のとおりです。」の欄に「私が期限の利益を喪失他時から、5年が経過しているので、消滅時効を援用します」といった感じで、「時効の援用」をしましょう。
簡裁から届く答弁書のひな形には、「話し合いによる解決を希望します」という欄があるのが通常です。こちらにチェックして穏当に解決したくなるかもしれませんが、とりあえず、時効の主張をしてみましょう。
もし時効がダメなら、和解を検討しましょう。その為に、「時効が認められない場合、検討します」と記載しておくのもいいと思います。
答弁書の出し方
上記記載例や、リンク先の記載例を参考に答弁書を2通作成して、2通とも裁判所に提出します。2通目はコピーでもOKですが、印鑑は、2通とも押印します。
提出方法は、裁判所を訪れて、簡裁の書記官室に訴状と作成した答弁書2通を持参してももちろんOKですし、郵送でも大丈夫です。郵送の場合、念のため書留などで送りましょう。宛名は、「○○簡易裁判所御中」で十分です。
忘れないようにしたいのは、裁判所に提出した書類は、自分用の控えもコピーをとっておくことです。
答弁書を提出すると、そのうちの1通が被告に渡されます。
この段階で、時効中断事由などの反論がなければ、原告が自主的に訴訟を取り下げることもあります。取り下げられたら、それで解決、裁判は終わりです。
逆に言うと、取り下げられない場合は、時効が何らかの理由で成立していない可能性があります。請求を認めざるを得ず、和解を目指す方向に方針転換する必要があるかもしれません。
期日への出頭
取り下げられることなく、指定された第1回口頭弁論期日を迎えた場合は、以下の流れを想定しておいてください。
答弁書提出後、期日前日まで
まず、答弁書提出後、期日の前に、原告から時効中断事由に関する準備書面が提出された場合、タイミングにもよりますが、事前に裁判所から連絡があります。
それによって、どのような時効中断が主張されるのか分かります。それで時効は無理だと判断できるなら、和解の方向に、方針変更しましょう。自分で判断できない場合は、ぜひ弁護士に相談だけでもしましょう。借金問題については、無料相談窓口も多くあります。
期日当日の流れ
期日には、もちろん、できれば出頭した方が良いです。
しかし、出頭しなくても、答弁書を提出していれば、その通り主張をしたことにはなります。自分が欠席している場合、事前に提出されている訴状や準備書面に記載されている以外の主張がなされることはないので、何が主張されたか知らないうちに、訴訟が進んでしまうことはありません。
持参するものは、本人確認書類と裁判所から送られた書類と自分が提出した書類の控えです。
さて、第1回口頭弁論期日に出頭すると、最初に戸惑うのは、どこに行けば良いかです。しかし、裁判所から届いた書類にどこの法廷で裁判が行われるのか記載されているので、よく確認して下さい。書類をなくしてしまって分からないなら、簡易裁判所の民事書記官室を訪ねましょう。
法廷に着いたら、自分が出頭していることを裁判所の職員に知らせましょう。法廷の前の廊下に出頭した人が署名するような用紙が備え置かれていれば、それに署名して、法廷の中に入って傍聴席に座りましょう。
大きな裁判所の場合、驚くのは、同じ時間に何件も期日が指定されていることです。その場合、時間どおり始まらないこともあります。呼ばれるまで、傍聴席で待ちます。
呼ばれたら、傍聴席から柵の内側に入ります。たいてい、裁判官に向かって右側、裁判官から見て左側が被告席になります。
まず、最初に裁判官から、原告に対して、「訴状陳述されますね」と問いかけられて、原告が「はい」等と応じます。続けて、被告にも「答弁書陳述されますね」と聞かれるので、はいと答えます。
そのあと、時効が主張通り成立していれば、原告は、どうしようもないはずですが、中断事由などの反論がある場合は、時効が成立しないと言うことになります。そうなると、基本的に支払うしかありません。
そこで、「それなら支払うしかないですが、分割弁済を希望します」とか、「利息を少し免除してほしいです」等といった感じで、希望を述べましょう。図々しいと言うことはないので、率直に希望を伝えてください。
どこまで条件的に応じられるかは、相手次第ですが、5年かけて60回払いくらいなら、応じてもらえることが多いです。
その日のうちに和解成立となることも多いでしょう。和解が成立すると、後日、「和解調書」という書類が届きます。振込先なども和解調書に記載されます。