建物明渡請求の請求の趣旨の基本形は、
第1 請求の趣旨
1 被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の建物を明け渡せ。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決並びに仮執行宣言を求める。
という形です。
物件目録の書き方
問題は、別紙物件目録です。
物件目録の記載方法については、手続き編の訴状の記事でも解説しましたので、こちらも併せてご覧下さい。
物 件 目 録
建 物
所 在 名古屋市中区丸の内一丁目
家 屋 番 号 ○○○番
種 類 共同住宅
構 造 木造瓦葺二階建
床 面 積 1階 170.20㎡
2階 150.20㎡
上記建物の内1階 103号室
別紙図面のABCDAを順次結んだ部分(赤色斜線部分)25㎡
良くあるパターンのマンションアパートの一室の明け渡しを求める場合は、上記のような記載例になります。
一戸建ての賃貸など、建物全部が賃貸物件である場合、床面積まで、登記簿の内容を転記するだけですが、一室の明け渡しを求める場合は、建物の該当部分を特定しなければいけません。
賃貸アパートの場合、部屋番号がついていると思いますので、部屋番号だけで特定することでも、十分のように思われますが、図面でも特定するように求められますので、建築時の竣工図の平面図などを用いて、下図のように別紙図面を作成して添付します。下図は概略図で実際には正確な寸法の図面が適切です。
面積は、「約」25㎡でも大丈夫ですし、賃貸借契約書に、賃貸部分の面積の記載があれば、それと合わせておくのが無難です。
駐車場の明渡請求
駐車場の明渡請求など、土地の一部の明け渡しを求める場合、請求の趣旨としては、以下のようになります。
第1 請求の趣旨
1 被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の土地を明け渡せ。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決並びに仮執行宣言を求める。
問題は物件目録、特に別紙図面です。
ちなみに、明け渡しを求める土地上の物件が主文で明示されている必要は、必ずしもありません。たとえば、自動車の撤去を請求の趣旨に記載する必要はありません。
物 件 目 録
土 地
所 在 名古屋市中区丸の内一丁目
地 番 ○○○番
地 目 宅地
地 積 100.80㎡
上記土地の内、区画番号3番 別紙図面記載のイ、ロ、ハ、ニ、イの各点を順次直線で結んだ部分 約12㎡
理想的なのは、駐車場工事の際の工事図面、それがなければ、地積測量図に、位置及び寸法を正確に記載します。
建物収去土地明渡請求
建物を取り壊して土地の明け渡しを求めるような場合です。収去とは取り壊しのことです。
この場合、建物についても、請求の趣旨で特定することになっています。
第1 請求の趣旨
1 被告は、原告に対し、別紙物件目録1記載の建物を収去して、別紙物件目録2記載の土地を明け渡せ。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決並びに仮執行宣言を求める。
明渡までの賃料(賃料相当損害金)の支払を求めるとき
実務的には、賃料の滞納をしている相手に対して、明渡が完了するまでの賃料(賃料相当損害金)の支払を同時に求めることが一般的です。
賃料相当損害金とは、契約の解除が成立した日の翌日以降は、賃貸借契約は終了しているので、賃料ではなく、賃料相当額の損害金という意味で賃料相当損害金と呼びます。
契約で、解除後の占有に対しては、賃料の二倍の損害金を支払うとされている場合には、請求原因で、契約の規定の存在を主張して、請求の趣旨でも解除日の翌日以降については、倍額の請求をします。
第1 請求の趣旨
1 被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の建物を明け渡せ。
2 被告は、原告に対し、金34万5806円を支払え。
3 被告は、原告に対し、令和元年5月11日から第1項の建物の明渡済みまで1ヶ月あたり16万円の割合による金員を支払え。
4 訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決並びに仮執行宣言を求める。
上記は、月8万円の賃料の物件で、解除が5月10日付で成立し、その翌日以降分、倍額の損害金を求めているパターンです。10日までの日割金額を含めて、滞納額が確定していますので、滞納賃料と、明渡までの約定損害金を別の項目にするとすっきりしてわかりやすくなります。
なお、敷金の預託を受けている場合でも、賃料から控除する必要はありません。