訴状には被告の住所を書くのが原則
訴状には、被告の住所を記載します。しかし、住所がどうしても分からない場合は、職場の住所(就業先住所)や、分かっている最後の住所を記載することができます。
この場合、なぜ住所が分からないのかについて、訴状と一緒に上申書に事情を記載して提出すると良いでしょう。
これらの情報も分からない場合は、訴状を却下するという考え方が主流ですが、住所不明で訴状を受け付けた後、調査嘱託という方法で、被告の住所を調べることができるという考え方もあります。これについては、後述しますが、特殊なケースです。
基本的には、住民票の取得を頑張りましょう。
住民票の取得ができる
債権者が権利行使の必要がある場合、住民票の写しの取得ができるとされています(住民基本台帳法12条の3)。
しかし、名前しかわからないという場合には、氏名から住民票を割り出すことはできません。
今は住んでいないが、過去の住所はわかる場合、その住所の市区町村にて正当な権利行使の必要がある第三者として住民票または除票の写しの請求をしてください。被告が、すでにその住所から転出している場合には、除票を取り寄せると、転出先がわかるため、住民票がないなら除票の写しをくださいという形で請求しましょう。
そして、除票から転出先がわかれば、その転出先の住民票を取り寄せ、現住所を調査するのです。
弁護士であれば調査可能な場合も
弁護士であれば、職務上請求といって、相手方の住民票や戸籍を取得することが可能です。また、回答を拒否される場合もありますが、各種機関に照会を行う、弁護士照会という方法もあります。
しかしながら、弁護士は、単なる身元調査を引き受けることはできません。あくまでも受任した事件について必要がある場合に限り、このような手段を執ることができます。
調査嘱託の申立て
被告の住所が分からないからと言って、裁判を提起することができないとすれば、憲法上の権利である裁判を受ける権利を蔑ろにするものであり適切ではありません。
そして、電話番号や銀行口座などが判明しているという場合、銀行等に対して、裁判所から契約者の住所の回答を求めて調査嘱託をすると言うことが考えられます。
この方法は、必ず認められるとは限りません。
住所を知り得なかった理由や、請求自体の妥当性などから、裁判官の裁量により判断され、職権発動がなされていると考えられます。したがって、調査嘱託の申し立てに際しては、住所を知り得なかった事情、調査できる範囲で調査を尽くしたことなどを説明する必要があるといえるでしょう。
このような調査嘱託について、 架空請求による詐欺事件の損害賠償請求で、銀行口座とカタカナの氏名で被告の記載がなされていた事案について、富山地方裁判所は、訴状を却下しました。これに対し、抗告審である名古屋高等裁判所金沢支部は、平成16年12月28日、「被告の特定について困難な事情があり,原告である抗告人において,被告の特定につき可及的努力を行っていると認められる例外的な場合には,訴状の被告の住所及び氏名の表示が上記のとおりであるからといって,上記の調査嘱託等をすることなく,直ちに訴状を却下することは許されないというべきである」と判示して、訴状却下命令を取り消しました。
まさに今自分が欲している情報でとてもためになりました。
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