賃貸マンションの賃料不払いによる解除という基本パターン
賃貸借契約に限らず「契約の解除」を主張する場合の要件事実は、以下のとおりとなります。
1 債務不履行の発生
→ 契約の締結など債務の発生原因を主張する
2 相当期間を定めて債務の履行を催告をすること
3 相当期間の経過
4 解除の意思表示
賃貸借契約解除の要件事実
賃貸借契約の解除を場合について、具体的な請求原因を見ていきましょう。
まず、「1 債務不履行の発生」を主張するため、賃貸借契約の締結の事実を主張します。明渡を求める前提として、引渡の事実も主張します。
第2 請求の原因
1 原告は、平成28年3月25日、被告に対し、下記約定のとおり、別紙物件目録記載の建物(以下「本物件」という)を賃貸し(以下「本件賃貸借契約」という)、同日、引き渡しを完了した(甲1)。
記
賃 料 月額8万円
支払方法 当月分を前月末日までに支払う
そして、賃料が滞納になっていることを主張します。
2 ところが、被告は、平成30年12月分から、本件賃貸借契約に基づく賃料の支払を遅滞し、本日現在、4ヶ月分の賃料を遅滞している。
契約解除をするときは、最後通告として改めて催告することになっていますので、その催告をしたことを主張します。そして、契約の解除は、解除の意思表示をすることによって、解除権を行使したことになりますので、解除通知をしたことを主張します。
実務的には、解除権発生の要件である催告と解除通知は、一つの内容証明郵便による通知で兼ねることが多いので、下記の記載例は、そのような場合を前提としています。
3 そこで、原告は、平成30年4月10日、被告に対し、平成30年12月から平成31年4月分までの賃料合計32万円を、平成30年4月25日までに支払うよう催告するとともに、同期日までに支払がないときは、本件賃貸借契約を解除すると通知した(甲2)。
4 しかし、同期日を経過しても、被告は、滞納賃料の弁済を一切しなかった。
最後は「よって書き」と呼ばれる以下のような文章で締めます。
5 よって、原告は、被告に対し、賃貸借契約の終了による本物件の明渡並びに滞納賃料及び賃料相当損害金として、平成30年12月1日以降、1ヶ月あたり8万円の支払いを求める。
これが、最もシンプルなパターンの賃料不払解除での明渡請求のパターンです。
1ヶ月の滞納では契約解除はできません
賃貸借契約の解除は、1ヶ月の滞納では、認められません。
契約書に、1ヶ月分滞納したときは解除できる、と書かれていてもダメです。
「信頼関係破壊の法理」といって、継続的な契約であり生活や事業の基盤になる賃貸借契約は、単純に債務不履行が発生したと言うだけでなく、信頼関係を破壊したと言うべき程度の滞納である必要があります。
明確な基準はありませんが、目安としては3~4ヶ月分くらいの滞納が発生したときに、催告と契約解除の意思表示を内容証明郵便で発送します。
基本形以外のパターン
現実には、ケースバイケースで、イレギュラーな事情があるのが普通です。次の記事では、そのようなちょっとしたイレギュラーパターンも、紹介します。