弁護士を付けないで裁判を起こす、起こされた時に参考になる本をレビューします。
今回紹介するのは、裁判ウォッチング市民の会監修という弁護士さんの著書である「自分でできる少額訴訟ハンドブック」という日本加除出版の書籍です。
良いところ
この本の良いところは、小説を読んでいるような感じで、登場人物の法律問題を少額訴訟で解決するための申立、審理、判決、執行の一連の流れを知ることができるということです。裁判当日のやりとりが会話形式で紹介されていたり、陳述書が全文紹介されていたり、訴状や答弁書の雛形が金額を含めて全て記載された状態で紹介されているなど、とても具体的です。
どのような事件類型で、どのような争点がある場合に、どのような証拠を提出し、陳述書には何を記載するべきかということが具体的な事例で紹介されているのは、とても分かりやすいです。
類書でも、訴状や陳述書は、簡潔に事実を時系列に沿って書くべきであるとの説明がなされていますが、やはり、事例を通じて、具体的な記載例があるとイメージが湧きやすいと思います。
裁判官からは、どういった質問を受けるのか、どのように回答するのが有利なのか、そういったことも解説されています。裁判官から聞かれたことに、関係の無い話をしたり、感情的な態度を取ったりするなど、裁判所でやってはいけないことが具体的なストーリーに沿って説明されているので、こういったことも参考になるでしょう。
類書を読んでも、裁判の具体的なイメージがつかないという方は、本書をおすすめします。
悪いところ
本書の悪いところは、とくにありません。いうまでもありませんが、本書は、少額訴訟に特化していて、通常訴訟や通常訴訟でやるべきような複雑な訴訟類型を想定していないのは当然です。 本当に少額訴訟に特化した書籍なので、準備書面の書き方など何度か期日を重ねる場合を想定した解説は全くありません。
本書の構成
第1章 少額訴訟をするぞ
第2章 少額訴訟の訴状がきた!
第3章 少額訴訟を見てみよう
第4章 少額訴訟本番
第5章 少額訴訟の終着駅とその先
第6章 少額訴訟のあれこれ
第1章、第2章では、訴状と答弁書の書き方と提出の仕方を説明しています。
添付するべき証拠や、陳述書の記載例なども、具体的に説明されています。
第3章では、傍聴の仕方が説明されています。
そして、具体的な裁判の流れに沿って手続の説明がされています。NGな答え方、態度などが説明されているのも面白いです。
第4章は、本書の登場人物が実際に裁判の当日に裁判所に出廷する際の準備事項や、当日の流れ、和解協議の進められ方等が説明されています。
第5章は、判決後の不服申立や強制執行が説明されています。
第6章ではその他の事例を通じた、やりとりや証拠などが解説されており、第5章までの事例とは、異なる類型や争点の裁判が説明されています。
少額訴訟を初めてやるなら読んでおくと良い本
この本でも説明されていますが、少額訴訟というのはメリットだけでなく、デメリットがあります。少額訴訟では、一回きりの審理で結論が出るため、争点と立証方法の関係をしっかりと整理していく必要があり、かえって戦略を練っていく必要があります。そのため、無料相談でもいいから、弁護士に相談をして予備知識を得ておく必要があるのです。