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貸金返還訴訟

利息や遅延損害金の計算方法と請求の趣旨の記載

投稿日:9月 2, 2019 更新日:

元金とともに利息及び遅延損害金を請求する場合の請求の趣旨の基本形

第1 請求の趣旨
 1 被告は、原告に対し、金100万円及びこれに対する令和元年8月1日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決ならびに仮執行宣言を求める。

これは、元金が100万円で、利率が年利5%、令和元年8月1日から完済となるまでの日数に対する利息や遅延損害金を請求するという、記載になります。

利率の異なる利息と遅延損害金を請求する場合

利息と遅延損害金の利率が同じとは限りません。
利息も遅延損害金も、利息制限法などの特別な法律に違反しない範囲で、契約書で定めることができます。

例えば、100万円を平成30年10月1日に貸し付け、弁済期限を令和元年8月31日とし、利息3%、遅延損害金14.6%となっている場合の請求の趣旨の記載は、次のようになります。

第1 請求の趣旨
 1 被告は、原告に対し、金102万7534円及び内金100万円に対する令和元年9月1日から支払い済みまで年14.6%の割合による金員を支払え。
 2 訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決ならびに仮執行宣言を求める。

「102万7534円」という金額は、元金と弁済期日までの利息の合計額です。計算方法は、1,000,000×3%÷365日×335日です。1円未満の端数は切り捨てます。
「内金100万円に対する」というのは、遅延損害金の計算上の元金は100万円であるということです。利息に対してさらに遅延損害金は発生しませんので、14.6%の遅延損害金の対象となる元金は102万7534円の中の100万円部分だけであることを意味しています。

利息や遅延損害金の利率や起算日が異なるいくつかの元金をまとめて請求する場合

たとえば、利息等が14.6%の100万円の貸金と、遅延損害金が20%の50万円の貸金を請求する場合、下記のような記載が可能です。

第1 請求の趣旨
 1 被告は、原告に対し、金150万円及び内金100万円に対する令和元年9月1日から支払い済みまで年14.6%の割合による、内金50万円に対する令和元年10月1日から支払い済みまで年20%の割合による金員を支払え。
 2 訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決ならびに仮執行宣言を求める。

ただ、これだと分かりにくいので、2項に分けて、下記のように記載するほうが、個人的には、おすすめです。

第1 請求の趣旨
 1 被告は、原告に対し、金100万円及びこれに対する令和元年9月1日から支払い済みまで年14.6%の割合による金員を支払え。
 2 被告は、原告に対し、金50万円及びこれに対する令和元年10月1日から支払い済みまで年20%の割合による金員を支払え。
 3 訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決ならびに仮執行宣言を求める。

遅延損害金の起算日が異なる元金が多数の場合

毎月の賃料の滞納額の遅延損害金まで請求したいという場合、各支払日から遅延損害金を計算しますので、遅延損害金の起算日が異なる元金がたくさんある形の請求となる場合があります。このような場合、上記のように、請求の趣旨をたくさんの項目に分けて記載する方法のほか、別紙一覧表を利用することが出来ます。

第1 請求の趣旨
 1 被告は、原告に対し、金240万円及び別紙一覧表記載の各内金に対する同一覧表記載の各起算日から各支払い済みまで年14.6%の割合による金員を支払え。
 2 訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決ならびに仮執行宣言を求める。

別紙            一 覧 表

番号     内 金 起算日
  600,000円 令和元年6月1日
  600,000円  令和元年7月1日
   600,000円  令和元年8月1日
  600,000円  令和元年9月1日

利息の計算方法

基本

利息は、元金、期間、利率から計算します。
基本の計算式は、

元金 × 利率 × 日数 ÷ 365

となります。

元金 × 利率

この部分が、1年分の利息の金額です。例えば、100万円の年利5%の場合、ちょうど一年分の利息は、5万円ということになります。
1年分の利息の金額を、1年の日数である365で割ると、1日分の利息が出せます。これをさらに日数で掛ければ、その日数分の利息の計算ができます。

50,000円 ÷ 365 = 136.986301369863014

 さらに、60で掛ければ、60日分の利息が計算できるということになります。端数処理は、最後に切り捨てます。

閏年の場合

利息の計算をする期間が閏年を含む場合は、366日で割ることで1日分の利息を計算します。利息を計算する期間が、年をまたぐ時は、その年ごとに、計算をする必要が出てきます。

令和元年8月1日から閏年である令和2年5月10日までの利息計算

① まず、日数の計算をします。
R1.8.1 〜 R1.12.31 153日
R2.1.1 〜 R2.5.10 131日 

② 各年の利息を計算します。
R1分 1,000,000円 × 0.05 × 153 ÷ 365 = 20958.9041 
R2分 1,000,000円 × 0.05 × 131 ÷ 366 = 17896.1749

③ 合計して端数を切り捨てます。
20958.9041 + 17896.1749 = 38855.079

利息は、38,855円となります。

1年以上の期間を含む場合

利息の計算期間内に、1年以上の期間を含む場合は、閏年かどうかに関係なく1年分の利息として計算します。

平成29年4月1日から令和2年5月31までの利息計算

平成29年4月1日から令和2年4月1日までの3年間は、1年分の利息の3年分として計算します。そして、1年未満の4月1日から5月31日までの61日間について、上記同様の方法で1年未満の利息額を算出して合計します。

① 3年分の利息 1,000,000 × 0.05 × 3 = 150,000
② 61日分の利息 1,000,000 × 0.05 × 61 ÷ 366 = 8333.333
③ 合計して端数カット 158,333円

期間の初日と最終日を含むか

貸金の利息については、特約がない限り、初日と弁済期日当日の両方を利息の計算期間に含めて計算します。弁済期の翌日から履行遅滞になるので、遅延損害金が利息の利率と異なる時は、弁済期の翌日から遅延損害金、弁済期の当日までは利息の計算という理解になります。

関連民法改正で変更された法定利率はいつから適用するのか

関連エクセルで請求の趣旨の日数計算

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