訴状をどこの裁判所にて提出するのかというのが、管轄の問題です。
訴状の名宛人の記載も、管轄裁判所になります。たとえば、 名古屋地方裁判所に提出するなら、「名古屋地方裁判所 御中」と記載します
管轄には、地方裁判所(地裁)と簡易裁判所(簡裁)の区別の問題と、名古屋地裁か岐阜地裁かという地域の区別の問題があります。
それぞれ、事物管轄、土地管轄といいます。
事物管轄 ・・・ 例) 簡裁 or 地裁
土地管轄 ・・・ 例) 名古屋地裁 or 岐阜地裁
事物管轄
地裁と簡裁では、手続きの違いがあります。
どちらを利用するのかで利用のしやすさが違います。
たとえば、簡易裁判所の場合、裁判所の許可があれば、弁護士以外でも代理人として出廷できる場合があるということや、司法委員の関与があることなどです。
そのため、業務上、従業員が代理人として出廷したいということならば、簡易裁判所で裁判ができるようにするというテクニックが必要になります。
基本的には、訴額が、140万円以下なら簡裁、それを超えると地裁の管轄になります。例外的に、契約書で訴額に関係なく簡裁を合意管轄とするという取り決めをしておくと、簡易裁判所にも管轄が認められます。
【合意管轄】
契約書等の合意文書で管轄裁判所をあらかじめ決定しておくことができます。これを活用すると、自分の住所の近くの裁判所を利用できたり、訴額が140万円を超える場合でも、簡易裁判所で民事裁判を起こすことができます。
実際に、この合意管轄を使って、140万円を超える訴額の訴訟を、信販会社の従業員が出頭して、簡易裁判所で提起するということが行われています。裁判を多数取り扱う企業の場合、すべての訴訟事件を弁護士に依頼するのでは、コストがかかりすぎることから、このように訴訟を自前で対応しているのです。このような企業は、扱う民事裁判も定型的であることから、なれてしまえば、弁護士でなくても、十分に対応できます。
訴額の算定方法
合意管轄が特に定められていない場合、訴額を算定し、140万円を超えるかどうかで、簡易裁判所か地方裁判所か管轄を決定します。
訴額とは、その裁判の請求の金額です。
貸金や請負工事代金の請求ならば、請求する元金の額が訴額であり、比較的単純です。
不動産に関する事件については、固定資産評価額を基に算定します。そのため、固定資産評価証明書が必要になります。但し、土地については、固定資産評価額の2分の1の金額を使うことになっており、明渡をもとめる訴訟の場合は、更にその2分の1の額が訴額ということになっています。
詳しくは、こちらの記事もご参照ください。
訴額の算定は、印紙代の計算でも必要になります。また、訴状の記載事項ですので、1円単位で算定する必要があります。
土地管轄
ある訴訟で認められる土地管轄は一つではありません。名古屋でもできるし岐阜でもできるというように、複数認められることがよくあります。
そして、たいていの場合は、自分の住所の管轄の裁判所でできることが多いです。
土地管轄の根拠は、一つではありません。例えば、被告の住所地(普通裁判籍)に必ず認められ、義務履行地や不動産の所在地に認められる場合があります(特別裁判籍)。
特別裁判籍には色々な種類がありますが、その中でも、義務履行地を根拠とする管轄が認められることによって、原告である自分の住所で訴訟ができる場合がほとんどになるのです。
義務履行地とは
義務履行地とは、貸金であれば返済予定日にお金を持っていくべき場所のことです。民法上の原則として、債務の弁済は債権者の住所地に持参してすべきものとされています。これを持参債務の原則といいます。
この原則のため、普通裁判籍は、被告の住所とされているにもかかわらず、原告の住所で裁判ができる場合が多いのです。
管轄裁判所一覧
裁判籍のある住所が決まったとして、その住所を管轄する裁判所がどこになるかは、裁判所ホームページの管轄裁判所一覧を確認するのが正確です。
http://www.courts.go.jp/saiban/kankatu/index.html
管轄裁判所が決まったら、訴状の宛名に記入しましょう。封筒の宛先のことではなく、訴状自体の名宛人の記載「名古屋地方裁判所 御中」などという記載のことです。
それ以外の欄に管轄裁判所を記載する必要はありません。