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証拠説明書

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証拠説明書の存在意義

証拠説明書は、提出されている証拠の一覧表です。

裁判官はたくさんの事件を同時に抱えていますので、その裁判でどんな証拠が提出されているか、証拠説明書をもとに確認しています。

単純な訴訟ではあまり重要度が高いとは言えませんが、20-30以上の証拠が原告被告双方から出るような事件では、裁判官が、証拠説明書ベースで証拠構造を把握されている時もありますので、意外と重要な書類です。

証拠説明書の書き方

証拠説明書は、一覧表形式で作成します。記載する事項は、証拠番号、標目、原本写しの別、作成日、作成者、立証趣旨です。

一般的な書式

証拠説明書のイメージ

ダウンロードはこちらから。
【書式】証拠説明書

標目

標目欄には、基本的には、その書証のタイトルを記載します。
提出したい売買契約書のタイトルが「土地売買契約証書」となっていれば、そのまま「土地売買契約証書」と記載します。

タイトルがない書類の場合、どうしたらよいでしょうか?
厳密なルールはありませんので、裁判官が提出証拠を確認するときに分かりやすいように、という観点で決めればいいと思います。たとえば、その文書が家計簿であれば「家計簿」とすれば良いですし、会話内容を記載したメモであれば、「令和○年○月○日の原告と被告の会話内容を記載したメモ」でも良いわけです。

「「先日は、お忙しいところ」で始まる書面」といった記載例もあります。オールマイティで使いやすく、このような記載も実務上よく見られます。しかし、このような書き方では、それがどんな証拠なのか、わかりにくい場合もあります。証拠を見なくても、どのような書面で何を立証しようとしているのか分かりやすい記載をすることを心がけましょう。

原本写しの別

書証は、期日の前にあらかじめ写しを提出しますが、原本を期日に持参して、裁判所で確認してもらいます。これが、書証の原本を取り調べるという作業です。

証拠説明書には、原本か写しかを記載しますが、期日の当日に原本の提示ができる場合は、証拠説明書の記載は「原本」です。

なお、写しとして証拠を提出する場合は、事前に写しを裁判所に提出し、相手方にも直送していれば、当日改めて提出したり持参する必要はありません。

作成日

作成日は、証拠に日付が記載されていれば、そのとおりに記載するのが原則ですが、実際の作成日と証拠上で記載されている作成日が異なるのであれば、証拠説明書には、実際の作成日を記載します。

作成日が、証拠上「平成31年4月 日」のように日にちの記載がない場合や、作成日が曖昧な時は、「平成31年4月頃」のような記載でも大丈夫です。

作成者

作成者は、その書類の作成名義人を記載します。通常、実際その文書を作成した人ですが、会社名義の文書を従業員が作成したという場合には、作成名義人は会社であり、従業員はその文書の名義人ではなく、単なる作成担当者にすぎません。このように、作った人と作成名義人が区別されることもあります。

作成名義人は、Aさんでも、Bさんが勝手に偽造したという場合は、括弧書きで(偽造文書)と記載します。Bさんが作成したけど、Aさんの指示で作成しただけならば、作成者欄はAと記載します。

いくつか作成日の記載方法に迷う例を説明しましょう

預金通帳の場合
預金通帳の証拠説明書の記載は、次のようになります。作成日は、取引が記載されている期間を記載すると、どのような証拠か分かりやすいですよね。標目も、銀行支店名や口座名義人を記載しておくと、良いでしょう。

号証標目
原本写しの別
作成日作成者立証趣旨
総合口座預金通帳(原本)
(○○銀行○○支店 名義○○○○)
H29.11.10

R1.5.31
○○銀行○○支店本件貸付金の弁済が平成31年3月以降なされていないこと

ちなみに、預金通帳で関係のない記載を見られたくないという場合は、関係ない記載をマスキング(黒塗り)して提出することもできます。その場合、次のように記載するといいでしょう。

号証標目
原本写しの別
作成日作成者立証趣旨
総合口座預金通帳(本件に無関係な記載をマスキングしたもの)(写し)
(○○銀行○○支店 名義○○○○)
H29.11.10

R1.5.31
○○銀行○○支店本件貸付金の弁済が平成31年3月以降なされていないこと

LINEの履歴
そもそも、ラインの履歴を証拠で提出する場合、どのように提出するのがいいでしょうか。

一般的な方法としては、ラインのトークをスクリーンショットしてプリントアウトすることが多いと思います。ラインのトークの履歴は、テキストデータに出力することもできるので、それをプリントアウトすることでもOKです。この場合、スタンプなどは、表示されないので、証明したいことを伝える手段として、どちらが良いか考えて提出しましょう。

さて、証拠説明書の記載例ですが、次のような記載例が考えられます。

号証標目
原本写しの別
作成日作成者立証趣旨
LINEのトークの履歴(写し)(原告と被告との間でやりとりされたメッセージ)H29.11.10

R1.5.31
原告及び被告(スクリーンショットは原告作成のもの)被告が本件貸付金の存在を認め、返済を申し出ていること
(画面右側のメッセージが原告、左側が被告の送信したものである。)

写真
写真の作成日は、撮影日とプリント日のどちらか迷うかもしれませんが、プリント日に意味があることは少ないので、通常は撮影日を記載します。
作成者は、プリントした人ではなく撮影者を記載します。写真の証拠説明書の書式例は、前記のダウンロード版の書式のように、標目と作成日、作成者のセルをまとめて記載する例もあれば、セルを分けない方法もあります。

ところで、写真は、撮影した人にとっては何の写真か分かりますが、撮影者以外の人にとっては、案外、どこで何を撮影したのかわかりにくいものです。そのため、複数枚の写真を提出する場合は、「写真台帳」として、撮影場所の見取り図を添付して、撮影場所と撮影方向をまとめた形式で提出した方がよいです。

写真をそのまま提出する場合も、証拠説明書に、下記のような別紙を添付し、写真ごとの撮影倍書と撮影方向を記載すると分かりやすいです。

立証趣旨

立証趣旨は、その証拠で何を立証したいのかを簡潔に記載します。記載内容から読み取りにくい場合は、その証拠と立証しようとしている事実の関係性などを適宜補足しましょう。

証拠説明書の提出方法

証拠説明書は、準備書面や訴状と同様に相手方が1名の場合は、2部作成して提出します。訴状とともに提出する場合は、証拠説明書を2部作成し、一緒に提出します。

被告から答弁書が提出された後は、被告に直送することも可能です。
裁判所にも、FAXで提出することができます。
証拠の写しも、FAXで提出、直送可能ですが、写真やカラーの文書は、FAXだとみにくくなるので、期日にクリーンコピーを持参しましょう
→ 準備書面の直送のやり方

ちなみに、細かいことですが、訴状と一緒に証拠説明書を提出するときは、事件番号が決まっていないので、証拠説明書の事件番号の表示は、空欄のままでOKです。係属部も決まってないので書かなくて良いです。

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