DIY裁判

本人訴訟を支援するため弁護士が作ったサイト。弁護士なしで裁判をする方法について解説します。

訴状 訴訟手続

請求の原因には何を記載するか

投稿日:5月 13, 2019 更新日:

請求の原因とは

請求の原因とは、金銭の支払や不動産の明け渡しを求める権利が存在することを根拠づける事実関係です。

法律の内容は、要件と効果で説明されます。たとえば、貸金返還訴訟において、①金銭を交付したこと、②返還を合意したこと、③弁済期日の合意、④弁済期日の到来、という4つの要件を満たしたときに、「貸金返還請求権」が認められるという効果が発生するのです。

したがって、どのように頼まれてお金を貸したのかとか、なぜ被告が返済できなくなったのかとか、嘘をついて返済を先延ばしにしているとか、といった事情は、本来、請求の原因に記載すべきことではありません

請求原因に余分なことを書いてはダメ?

しかし、難しく考える必要はありません。このような本来の請求原因ではない情報が書かれていたからと言って、訴状として受け付けてもらえないと言うことはありません。

ただ、事情が長々と書かれているのに、肝心の要件に当たる事実の記載がないとなると、訴状の補正を求められることになってしまいます。

裁判所は、まず、請求原因の整理をします。その整理のために邪魔な余分な記載が多すぎると、あなたがちょっと変わった人で、粘着質、クレーマー気質、過剰な権利意識の過剰な人物といった先入観をもたれる恐れすらあります。

被告の反論の機会のない訴状の段階で、長々といかに被告が悪質であるかを論じても、あまり有効ではありません。要件事実が端的に記載されていることが、その何倍も重要なのです。

評価は裁判所が行う

評価は裁判所が行うとはどういうことかというと、請求原因に記載すべきことは、事実であって、評価ではないと言うことです。

たとえば、債務不履行による損害賠償請求の請求原因で有効な主張は、
「被告は、詐欺的手段を講じて、原告を翻弄し、いかにも資産家を装っているが、真実は、5年前には、窃盗事件を起こして逮捕された経歴もある者であり、原告のほかにも多数の被害者が泣き寝入りを余儀なくされ、被告の行為は、このような被害者の基本的人権を・・・」などというものではありません。このような記載は、公開の法廷で陳述する主張書面としては、不適切である以上に、被告に対する名誉毀損といわれてもおかしくありません。

請求原因の主張として必要なのは、債権の根拠となる契約の存在と、それに基づく債権が履行期を過ぎているというものです。

被告に債務不履行責任があるか否かは、裁判所が決めるべき結論であって、あなたが主張すべきなのは、結論ではなく、その根拠です。根拠となる「事実」が主張立証されてはじめて「債務不履行である」という法的評価が付いてくるのです。

請求の原因に記載すべき事項は、紛争類型別のマニュアルの記事に詳しく解説しますので、そちらをご覧下さい。

-訴状, 訴訟手続

執筆者:


  1. 村上直之 より:

    参考になりました。

comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

行方不明になってしまった賃借人への対応(訴訟提起編)

賃借人が連絡がつかなくなったとか、行方不明という場合にも、賃貸人は、勝手に貸室内の物品を処分することはできません。 たとえ契約書に、所有権を放棄したものとみなす等の規定があったとしてもです。 どのよう …

訴状を作成しよう

まず、以下の訴状モデルを見て下さい。 シンプルな事案なら、このように2頁で完成します。 ①~⑨の記載を一つずつ確認していけば、簡単に作成できます。 この訴状の書式は、こちらからダウンロードできます。 …

事件名

事件名の付け方 事件名の付け方には明確なルールはありません。事件の種類を簡潔表すものが良いでしょう。訴状には、以下の画像のように記載します。 貸したお金の返還請求なら、「貸金返還請求事件」「貸金請求事 …

訴額の計算

訴額の計算は、弁護士でも意外と悩むときがあります。まずは、基本的なパターンからご紹介します。 金銭支払請求の場合は単純 金銭の支払いを求める訴訟の訴額は、特に難しくはありません。利息や遅延損害金を除く …

訴状訂正申立書の具体的記載例(訴額の修正)

訴額の計算が違っている場合、訴額を修正することになります。また、請求の原因や請求の趣旨の変更の結果、訴額が変わってくる場合は、請求原因の訂正と合わせて訴額の記載の修正もしましょう。例えば、損害賠償請求 …