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不動産明渡訴訟

賃貸借契約の解除による明渡請求の請求原因の記載例(用法違反)

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賃料不払い以外の理由で賃貸借契約を解除する場合の請求原因について説明します。

賃料不払いは、賃借人の最も重要な債務の不履行ですので、契約解除は容易に認められますが、それ以外の理由で契約を解除するのは、基本的には難しい場合が多いです。

賃料不払い以外の解除理由は、用法違反と呼ばれるパターンがほとんどです。

用法違反とは

用法違反とは、たとえば事務所使用禁止、ペット禁止、ピアノ楽器使用禁止、喫煙禁止、危険物の持込禁止などといった、賃貸物件の使い方に関する契約違反です。

いうまでもなく、このような賃貸物件の使い方について契約で禁止事項が決められているのは、同じ建物内の他の住民や、近隣に迷惑をかけたり、危険をおよぼすおそれがあったり、賃貸物件の汚損に繋がる可能性があるからです。

用法違反も、契約違反、つまり債務不履行の一種です。

契約違反なのに解除できない?

しかし、単に契約違反といえる事情が発生したとしても、すぐさま契約解除ができるかというと、そうではありません。

賃貸借契約のような継続的な契約で、当事者の生活に大きく関わる契約は、形式的に契約違反があるからといって、常に契約の解除が認められるわけではありません。

用法違反が重大であり、契約を継続することが困難だといえる程度の信頼関係の破壊があるといえる程度のものである必要があります。これを信頼関係破壊の法理といいます。

用法違反による契約解除の請求原因

1 契約の締結と賃貸物件の引渡し
2 用法違反
  (1) 用法違反の根拠となる契約条項の存在
  (2) 用法違反に該当する事実
3  (信頼関係破壊の根拠事実)
4  相当期間を定めた用法違反の停止の催告
5 契約解除通知

用法違反による賃貸借契約の解除も、債務不履行を理由とする契約解除の一例です。したがって、債務不履行の存在、履行の催告、契約解除の通知の主張立証をすることが必要となります。

信頼関係破壊の根拠事実が括弧書きなのは、厳密には請求原因ではないためです。しかし、これは、理論的な問題で、実際には訴状に記載することが必要です。

以下、具体的な記載例を見ていきましょう。

請求原因事実の記載例

まずは、契約締結の事実と、物件を引き渡したことを主張します。
これは、賃料不払いで契約を解除するケースと同じです。

第2 請求の原因
 1 原告は、平成28年3月25日、被告に対し、下記約定のとおり、別紙物件目録記載の建物(以下「本物件」という)を賃貸し(以下「本件賃貸借契約」という)、同日、引き渡しを完了した(甲1)。
         記
   賃  料  月額8万円
   支払方法  当月分を前月末日までに支払う

次に、債務不履行の事実、つまり、用法違反の存在を主張します。
契約違反の根拠となる契約の条項と、それに違反する具体的な行為の内容を記載します。

以下の記載例は、ペットの飼育に関する契約違反の場合です。

 2 (1) 本件賃貸借契約の第8条は、本物件の使用にあたり、観賞用の小鳥、魚等であって明らかに近隣に迷惑をかけるおそれのない動物以外の犬、猫等の動物を飼育することを禁止している。
   (2) 被告は、この契約条項に反し、本物件内において、ミニチュアダックスフント1頭の飼育をしている(甲2)。

次に、信頼関係破壊の根拠となる事由を主張します。

このような、「信頼関係が破壊されている」という評価が問題になる法律要件については、その根拠となる具体的な事実を記載しなければいけません。抽象的な表現ではなく、具体的でなければならず、「極めて悪質」などといった余計な修飾語も不要です。

たとえば、「長期間」とか「何度も」という用語は、抽象的で、実際にどれくらい長期間なのか、何回なのか分かりません。あくまでも評価をするのは、裁判官ですから、貴方の感想ではなく、裁判官が評価の根拠とできる具体的な事実を記載するというのがポイントです。

3 (1) 本物件は、築6年の賃貸マンションであり、他に30戸の居室があり、常時20戸以上の居室が入居中である。
 同マンションの賃貸借契約では、各居室内はもとより、アプローチ、エントランスホール、エレベータなどの共用部分の汚損を防止し、噛み付き事故や鳴き声による騒音被害を防止するため、例外なくペット禁止条項を含むものとしている。
(2) ところが、被告は、遅くとも、平成31年3月以降、原告の承諾なく、ペットの飼育を開始した。
  被告の飼育しているペットは、しつけが十分でなく、共用施設で尿をするために、エレベータ内で異臭がするとの苦情が多数寄せられている(甲4)。
(3) 原告は、平成31年3月以降、被告に対し、ペットの飼育を中止するように再三にわたって申し入れているが、被告は、ペットの引き取りの宛てが無いなどとの理由で一向にこれに応じようとしない。一例を示せば、令和1年5月10日にマンションないの掲示板にペット禁止の案内を掲示したほか、同日、各居室に案内文書を配布した(甲5)。さらに、同年7月10日、同年10月10日、同年11月15日には、直接被告に対して事情を聞き取るとともに、ペットの飼育を中止するように求めた(甲6)。
 しかしながら、被告は、現時点においても、ペットの飼育を継続している。
(4) 以上のことからすれば、被告の用法違反により、本件賃貸借契約の継続が困難な程度に、原告と被告との間の信頼関係が破壊されるに至っていることは明らかである。

このように、評価根拠事実の主張は、客観的かつ具体的に記載するという点が、ポイントです。

次に、用法違反も債務不履行の一種ですから、それを理由とする契約解除については、期限を定めて履行の催告をし、期限内に履行がなされなかったことを主張する必要があります。

4 原告は、被告に対して、本物件内でのペットの飼育をしないよう再三口頭で注意したものの、一向に応じなかった。原告は、令和2年1月15日、被告に対し、同書面到達の時から1ヶ月以内に、ペットの飼育を中止するよう催告する旨記載した書面を送付し、用法違反を中止するよう催告した(甲3)。同書面は、翌16日、被告に到達したが、同日から1ヶ月後の同年2月16日以降も、被告によるペットの飼育が継続している(甲2)。

そして、契約解除の通知をしたことも主張します。

5 そこで、原告は、令和2年2月22日、被告に対し、本件賃貸借契約を解除する旨通知した(甲7)。

最後は、よって書きです。

6 よって、原告は、被告に対し、賃貸借契約の終了により、本物件の明け渡しを求める。

賃料不払いの状況にはないので、未払賃料の請求はないことを前提としています。ちなみに、契約を解除した後は、賃料の受領をして良いか.という問題がありますが、これについては、別記事で説明します。

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