被告会社の登記が閉鎖登記になっている場合、閉鎖の理由を確認して下さい。会社の登記が閉鎖されているからといって、会社が消滅しているとは限りません。
本店移転で閉鎖
「平成●■年・・・名古屋市●●・・・へ本店移転」とあれば、管轄を跨いで本社の住所が変わったために、古い管轄の登記が閉鎖になっただけで、別の住所で会社は存続しています。
職権で閉鎖
民事裁判を提起するため、相手方の会社の登記を調べたところ、「平成8年6月1日平成2年法律第64号附則第6条第1項の規定により解散」との記載があり、さらに、「商業登記規則第81条第1項による登記記録閉鎖」となっていましたが、これはどういうことでしょうか。
前者は、会社が職権で解散になったという記載です。平成2年頃に最低資本金制度ができ、株式会社は1000万円の資本金がなければ設立できなくなりました。その制度ができる前に設立されていた会社は、何年か以内に資本金を増やしていけば良かったのですが、それができずに、解散させられた会社と言うことになります。
後者は、清算が長期間終わらずに放置されていたので、職権で登記が閉鎖されてしまったという記載です。
このような会社に対しても裁判を起こすことは可能です。長期間放置されたために閉鎖されただけで、清算結了していないので、会社は清算会社として存続しており、登記されている清算人が代表者となります。
清算人には任期はありませんが、さすがに死亡していたり、行方不明だったりすると、そのまま民事裁判を進められません。この場合、特別代理人の選任申立を行い、会社の一時的な代表者を決めて、裁判の対応をしてもらいます。
特別代理人は、利害関係の無い弁護士が選任されることが多いです。
清算結了されてる
会社が株主総会の決議などで解散すると、それだけで会社が消滅するわけではなく、清算中の会社になります。その後、清算結了すると、会社は消滅します。
ですので、解散登記がなされているだけなら、まだ清算会社として会社は残っているので、訴訟はできます。
これに対し、清算結了していると、会社は消滅している訳なので、裁判の相手方たり得ないとも思えます。
しかし、裁判の被告になるということは、まだ債務が残っているというわけです。(少なくとも原告の主張としては)したがって、債務が残っているから、清算結了の登記をしただけで、実際には、清算結了できていないから、清算人の立場は残っているという前提で訴訟提起することができると思われます。
破産している
破産開始決定があり、その後破産手続が終了すると、会社は消滅します。
この場合は、会社に対する権利が残っているといっても、破産する会社は、多額の債務を抱えているから破産する訳なので、このことで会社が存続していると考えることはできません。
しかし、会社名義の財産が残っている場合には、会社はまだ消滅していないと考えられています。たとえば、AさんがB社から不動産を購入したがB社名義のままになっているので、登記名義を変更して欲しいといった場合です。
この場合、Aさんが裁判を起こそうと言うときには、前述の特別代理人を選任することも考えられますが、破産が終了していないということで破産手続を再開するという事も考えられます。
本来破産手続中に判明していれば、管財人が処分して、債権者に案分に配当されていたはずですから、後から分かったといって、Aさんが取得できるとは限らないからです。
ケースバイケースの判断になりますが、きわめて長期間占有が継続しており、破産手続の後、取得時効が成立するほど期間が経っているようなときは、特別代理人を選任して貰い、Aさんに名義変更を認めて良いように思います。