DIY裁判

本人訴訟を支援するため弁護士が作ったサイト。弁護士なしで裁判をする方法について解説します。

訴状 訴訟手続

請求の趣旨の記載方法

投稿日:5月 13, 2019 更新日:

請求の趣旨とは

請求の趣旨とは、裁判所に求める判決の結論のことです。

たとえば、売買代金として100万円の支払を求める場合、請求の趣旨はこのようになります。

第1 請求の趣旨
 1 被告は、原告に対し、100万円を支払え。
 2 訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決並びに仮執行宣言を求める。

100万円と利息の支払を求める場合には、

第1 請求の趣旨
 1 被告は、原告に対し、100万円及びこれに対する令和元年5月10日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
 2 訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決並びに仮執行宣言を求める。

(関連)請求の趣旨の利息の記載の仕方

そして、この訴状によって提起した裁判が、原告の全面的勝訴となった場合には、判決ではこのような主文が言い渡されることになります。

  主 文
1 被告は、原告に対し、100万円及びこれに対する令和元年5月10日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
3 この判決は、仮に執行することができる。

これを見れば分かるとおり、請求の趣旨は、原告が求める判決主文の内容を記載するのです。

請求の趣旨には余分なことを書かない

請求の趣旨には、請求の根拠に関する記載は一切書きません。たとえば、損害賠償請求訴訟において、被告に過失があることなどは、「請求の原因」に記載し、請求の趣旨には、本当に結論しか記載しません。

このことを理解していないと、請求の趣旨に「売買代金として100万円を支払え」とか「利息として令和元年5月10日から支払済みまで・・・」等と記載したくなってしまいますが、このような書き方はしないことになっています。

被告が複数の場合

被告が複数の場合、しかも連帯債務者である場合には、以下のような記載になります。

第1 請求の趣旨
 1 被告らは、原告に対し、連帯して、100万円及びこれに対する令和元年5月10日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
 2 訴訟費用は、被告らの負担とする。
との判決並びに仮執行宣言を求める。

被告らという言い方はちょっと乱暴な物言いに思えるかもしれませんが、裁判用語だと思って気にせず使用してください。

「連帯して、」とは、2名の被告の負う支払義務が、連帯債務であることを示します。請求の趣旨には、余分なことを書かないと説明しましたが、連帯債務であることが明記されていない場合、被告がそれぞれ100万円の支払をする必要があるのか、50万円ずつの責任なのか責任の内容が特定できないため、このような記載をすることになっています。

不動産の明渡訴訟

不動産の明け渡しを求める場合には、土地なのか建物なのか、建物の一室なのか、土地には建物が建っているのか、自動車が残置されているのか、状況によって、請求の趣旨の記載の仕方が異なります。

事件類型ごとの請求の趣旨の記載の仕方は、紛争類型別マニュアルの記事で、詳しく説明していますので、そちらをご覧ください。 

-訴状, 訴訟手続

執筆者:


  1. 原田 豊 より:

    neutral様
    本サイト拝読しました。一般の国民に広くこのような有益情報を公開されておられることに敬意を表し、感動する者です。
    自身もDIYにて訴訟手続きを進めようと考えているものです。ありがたく感謝申し上げます。必要ページ(ほとんどすべて)印刷し、熟読しているのですが、以下1点気づいた点がございます。(私の探し方が問題なのかも知れません。)
    上記「不動産の明渡訴訟」の項にあります「紛争類型別マニュアルの記事」ですが、どのあたりに掲載されているのでしょうか?ご教示いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

    • neutral より:

      ありがとうございます。
      類型別の記事は、トップページから入れます。
      がしかし、まだかなり不完全です。

comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

簡裁の場合、1回目の期日で、一気に決着がつくかも、という話

簡易裁判所では、司法委員による和解の手続きが始まる! さて、前回は、ある意味、原則的な展開を前提として説明しました。 今回は、簡易裁判所特有のポイントについて説明します。 この話は、このサイトでお伝え …

そのまま使える訴状モデル(貸金)

貸金の返還請求を行う場合の訴状のモデル書式を公開します。 どこをどのように記載したら良いかは、手続き編をご覧ください。 ① 個人である原告が、会社である被告に対して、貸金元本と商事法定利率による遅延損 …

会社の登記を調べたら、閉鎖になっていた場合、民事裁判を起こせるか

民事裁判を提起するため、相手方の会社の登記を調べたところ、「平成8年6月1日平成2年法律第64号附則第6条第1項の規定により解散」 との記載があり、さらに、「商業登記規則第81条第1項による登記記録閉鎖」 となっていましたが、これはどういうことでしょうか。

証拠方法

訴状は基本的な証拠の写し(コピー)を同時に提出することとされています。訴状自体にも、証拠の一覧を次のように記載します。   証 拠 方 法 1 甲第1号証 登記事項証明書2 甲第2号証 金銭消費貸借契 …

請負代金請求訴訟の訴状の書き方

請負代金の請求訴訟の訴状のひな形はこちらです。 1 電気工事業者である下請人が元請業者に対して電気工事代金と、支払期日の翌日分から商事法定利率による遅延損害金を請求する事例→ 訴状例(請負代金請求)