退去手続きの第一段階は、退去の連絡です。
これを賃貸借契約の「解約の申し入れ」といいます。
中途解約もほぼ同義です。
具体的には、退去届の提出という行為が解約申し入れを意味します。
契約上、1ヶ月前に解約の申し入れをするとされていることが多いです。
本記事では、解約申し入れの方法や退去届のひな形などを説明します。
1 契約期間中でも中途解約ができるのか
契約書では一般的には契約期間が1年、2年と定められています。
素朴な疑問として、契約期間中に解約できるのでしょうか。
この疑問は、正しい感覚ですが、ほとんどの場合、契約書で中途解約権が認められていますので、問題ありません。
標準賃貸借契約書では、30日までに解約の申し入れをすることにより解約ができるとされています。
2 契約期間の終了時期に退去する場合
契約期間の終了とともに退去することは当然可能ですが、期間が終わると同時に、自動的に契約が終了するわけではありません。貸し手も借り手も何も意思表示せずに契約期間が満了すると、自動更新されることになっています。したがって、期間満了で退去するときも、黙って退去するわけではなく、手続きが必要です。
契約期間の満了時に、契約更新を希望しない場合、借地借家法26条により、1年前から6ヶ月前に更新しないとの通知(更新拒絶の通知)をしなければならないとされています。
ただし、契約書によっては、1ヶ月前までに通知をすれば良いとされていることも多いです。
いずれにしても、1ヶ月前に通知することで解約申し入れ(中途解約)ができるという規定があれば、6ヶ月前に通知をしていなくても、解約申し入れ(中途解約)として契約を終了させることができます。
3 解約申し入れの方法
以上の通り、契約期間の途中でも満了時期であっても、解約の申し入れ、または、更新拒絶の通知が必要であることがわかります。
解約申し入れなどの通知は、書面で行うことが適切です。
解約申し入れをしたことが証明できなければ、解約時期が証明できません。
事実上退去を完了していても、賃料が発生していると言われる恐れがあるので、書面で記録が残るようにしておくことが適切です。
まずは、契約書を確認してください。契約書で書面で通知すると定められていれば、もちろん書面での通知が必要となります。ただし、標準契約書では、解約申し入れを書面で行うとはされていません。しかし、上記の理由で書面で行うことが適切です。
大袈裟に思われる方は、書面で通知しないとしても、最低限、記録が残るように通知しましょう。そうでないと、賃貸借契約の終了日が不明確になり、いつまで賃料が発生するのかについて、トラブルになる恐れがあることは意識して下さい。
具体的な方法
具体的な解約申し入れの方法については、入居時の説明書類を確認してみてください。退去時の連絡方法に関する説明書類をもらっていることが多いはずです。
説明書類がないか、紛失したと言う場合には、管理会社に連絡をしましょう。
「〇〇マンションの賃貸物件をお借りしている者ですが、退去のご連絡のためにお電話しました(メールしました)。どうすれば良いかおききしたいのですが」と尋ねましょう。
そうすると、退去届の用紙をもらえたり、具体的な連絡方法を教えれくれます。大手の場合は、オンラインで、退去の連絡ができるシステムが備わっていたりします。
もし、大家や管理会社から、書面を出す必要はありませんと言われたらどうしたら良いでしょう。前記のとおり、書面を出しておくのは、終了日を明確にするためです。一応、書類で明確にしておきたいので、退去届をお送りしますといって、送っておく方が安心です。
解約の申し入れ書(退去届)の送り先は、大家か管理会社のどちらに送るべきでしょうか。賃貸借契約の当事者は、大家さんですから、大家に送る必要がありますが、管理会社がこれを取次ぎしてくれることも多いでしょう。
解約申入書(退去届)のひな形
解約の申し入れ書、退去届のひな形に特に決まりが無いとのことでしたら、こちらの書式をご使用ください。
解約の申し入れが完了したら、次は、明け渡しと立ち会い確認です。
4 賃貸借契約書がない場合や、中途解約が規定のない場合の解約申し入れ
例外的な場合について解説します。
契約書がない場合の賃貸借契約は、多くの場合、民法617条(改正前も同じ内容)の期間の定めのない賃貸借契約に該当しますので、民法の規定を根拠に、いつでも、3ヶ月前に解約の申し入れをすることによって、賃貸借契約を中途解約することができます。
問題は、中途半端な契約書で、契約期間は決まっているのに、解約申し入れに関する規定がない場合です。
理論的に考えれば、当然に中途解約権があるとはいえません。
最悪の場合、契約期間が終わるまで解約ができないことがあります。
この点は、誤解している人も多いのですが、借地借家法や民法は、借主の中途解約権に関する規定がなく、当然には中途解約ができないという考えが一般的です(例外で、定期借家契約に関しては中途解約に関する規定があります)。
とはいえ、大家側も中途解約は認めないとは考えていないことも多いでしょう。
”案ずるより産むが易し” うまく大家さんと話をして、解約日を決めましょう。
法律的にも、暗黙の合意として、中途解約権があるという主張が可能な場合もあると思います。
補修部位別の原状回復に関する裁判例
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