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不動産明渡訴訟 訴状

行方不明になってしまった賃借人への対応(訴訟提起編)

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賃借人が連絡がつかなくなったとか、行方不明という場合にも、賃貸人は、勝手に貸室内の物品を処分することはできません。

たとえ契約書に、所有権を放棄したものとみなす等の規定があったとしてもです。

どのような契約書になっていても、例外はないと思ってください。

このような場合に、弁護士に手続きを依頼すると、弁護士費用や実費が100万円ほどかかると言われるでしょう。賃料3万円くらいの物件だったら、3年分の家賃収入です。高すぎますね。

しかも弁護士によっては、手続きを遅滞し、何ヶ月も手続きに期間を要してしまいます。

手際よくやっても6か月くらいはかかります。ちんたらとやってしまうと、10か月以上かかることもあり得ます。

こうなると、機会損失を含めた損害はとても大きくなってしまいます。

ここでは、弁護士に依頼しないで、賃料不払いが発生してから、実際に明渡を実現するまでの手順を説明します。

この記事を読んでみて、たとえ費用が掛かっても弁護士に頼む価値があることが理解できればそれでも結構ですし、本人訴訟にチャレンジしてみても結構だと思います。

1 契約の解除はどのように成立させるのか。

解除通知を何とかして送る努力をする

通常、賃料不払いを理由に契約を解除するというときには、内容証明郵便により、賃料の催告と契約解除の意思表示をします。

被告が行方不明の場合にも、一応、内容証明郵便を送ってみて、届かないことを確認しましょう。

届かないならば、届かないことを確かめる必要もありますし、 もしかしたら、転送がかかっていて、届くということもあり得ます。

連帯保証人がいれば、連帯保証人に行方を知らないか聞く必要もあります。

また、後述しますが、住民票を調査する必要があります。

調査をした結果、判明した転居先住所がわかるのであれば、その住所地に内容証明郵便を送りましょう。

解除通知を送付できない場合

問題は、できる限りの努力をしても、行方が分からないという場合です。

このような場合のために、民法には、「公示による意思表示」という制度があります。

しかし、実際には、この制度を使う必要はありません。

なぜならば、訴状に契約解除をするとの記載をすれば、訴状の送達をもって、契約解除通知を兼ねることができるからです。

どのように記載すればいいかは後述します。

したがって、賃料不払いが発生し、本人にどうやっても連絡がつかないとなれば、即、裁判手続きを準備することになります。

2 訴状の作成方法

いろいろと調べるよりも、訴状を作り始めましょう。

作り始めると、必ず、分からないことが出てきます。

(1) どの裁判所に出すか。

管轄に関する一般的な説明は、こちらをご覧ください。→ 管轄

賃貸物件の明渡訴訟は、その物件の住所を管轄する裁判所が管轄裁判所となります。

市町村名から、管轄裁判所を、下記の裁判所のサイトから調べてください。

https://www.courts.go.jp/saiban/tetuzuki/kankatu/index.html

訴額が、140万円以下であれば、地裁でも簡裁でもOKですが、140万超なら地裁です。

(2) 被告の住所の記載はどうすればいいのか。

前述の通り、被告の住民票の調査が必要になります。

これが結構大変かもしれません。

住民票の写しは、本人や本人の代理人でなければ、原則として取得することはできません。

しかし、権利行使をするために必要な場合には、第三者でも取得することが可能とされています。

市町村の窓口によって、対応が異なるでしょうし、不慣れな職員が対応すると、間違った教示を受けるかもしれません。

が、しかし、以下抜粋する住民基本台帳法の規定に基づいて、被告の住民票を取得することができます。

第十二条の三 市町村長は、前二条の規定によるもののほか、当該市町村が備える住民基本台帳について、次に掲げる者から、住民票の写しで基礎証明事項(第七条第一号から第三号まで及び第六号から第八号までに掲げる事項をいう。以下この項及び第七項において同じ。)のみが表示されたもの又は住民票記載事項証明書で基礎証明事項に関するものが必要である旨の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、当該申出をする者に当該住民票の写し又は住民票記載事項証明書を交付することができる
一 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために住民票の記載事項を確認する必要がある者

このような規定に基づいて、賃貸借契約書に本人が記載した住所や、物件が居住用ならばその所在地の市役所に行って、被告の住民票を取得しましょう。

その際、あなたが賃貸人であり、被告が賃借人であることを示す賃貸借契約書や、賃料不払いになっていることがわかる通帳や、郵便受けがたまっている写真などできる限りの資料をもっていくとよいかもしれません。

さて、住民票の写しが無事取得できたとして(あるいは、知る限りの住所が不見当であることが判明したとして)、住民票を調査しても、行方不明者がわざわざ住民票の移動をしていることは考えにくいので、現住所はわからないでしょう。

それでも、住民票を調べても住所がわからないということの確認として意味があります。

訴状の被告の住所地の記載としては、行方不明だと、何と記載すればよいか迷いますが、わかっている最後の住所地を記載してください。

その物件に住んでいたのなら、その住所、物件名、部屋番号を記載してください。

(3) 事件名はどうすればいいのか。

建物明渡等請求事件 でOKです。

(4) 訴額・印紙額の計算方法

訴額と印紙の一般的な説明はこちら

建物の固定資産評価額を総面積で割って貸室の面積をかけた額の2分の1

例えば、建物全体の評価額が2000万円で、総床面積が300平米あり、その物件が40平米なら、
20,000,000円 ÷ 300 × 40 ÷ 2 = 133万3333円  

評価額は、裁判所に提出する必要があるので、市役所で固定資産評価証明書をもらってきてください。

(5) 物件目録の記載の仕方

こちらをご覧ください。

(6) 未払い賃料の請求の趣旨の記載の仕方

こちらをご覧ください。

(7) 請求原因の記載方法

前述の通り、被告が行方不明の場合は、訴状によって解除通知を兼ねるという特徴があります。

このような場合の実際の訴状の記載例は以下の通りです。

1 原告は、平成28年3月25日、被告に対し、下記約定のとおり、別紙物件目録記載の建物(以下「本物件」という)を賃貸し(以下「本件賃貸借契約」という)、同日、引き渡しを完了した(甲1)。
         記
   賃  料  月額8万円
   支払方法  当月分を前月末日までに支払う

2 ところが、被告は、令和2年1月分から、本件賃貸借契約に基づく賃料の支払を遅滞し、本日現在、4ヶ月分の賃料を遅滞している。

3 被告は、遅くとも令和2年2月から行方不明となっている。
 (1) 原告が、同年1月、被告に対し、賃貸借契約書に連絡先として記載された携帯電話の番号に連絡しても、被告は一切応答せず、同年4月には電話番号が繋がらない状態となった。
 (2) 原告は、同年2月10日付で、内容証明郵便により賃料の督促状を発送したが、不在のため受領されなかった(甲2)。
 (3) 原告は、同年2月24日、本物件を訪ねたが、被告は不在であり、郵便受けには多数の郵便物が溜まっている状態であった(甲3)。その後も、原告は、度々、本物件を訪ねているが、被告に出会うことはなかった。

4 そこで、原告は、被告に対して、本訴状をもって、令和2年1月分から同年4月分までの賃料合計32万円を本訴状の送達時から2週間以内に支払うよう催告するとともに、支払いなき場合は、本件賃貸借契約を解除するとの意思表示をする。

5 よって、原告は、被告に対し、本件賃貸借契約の終了に基づく目的物返還請求権として、本物件の明け渡しを求めるとともに、賃料ないし賃料相当損害金として、請求の趣旨記載の金員の支払いを求めるものである。

これを参考に、少し改変して請求原因を作成してみて下さい。

※ 「こういう場合はどうしたらいいかわからない」ということがあれば、コメント欄に記入してください。

(8) 証拠はどのように提出すればいいのか。

相手方が行方不明の場合、証拠の提出が重要になります。

その理由を簡単に説明すると、

相手方が行方不明の場合は、公示送達という方法で訴状を送達することになります。

公示送達とは、裁判所の掲示板に掲示して、一定期間経過したら、被告に届いたことにする、という制度です。

しかし、実際には、公示送達で被告が訴訟を知ることはほぼあり得ません。

そこで、被告が公示送達で訴状の送達を受けている事件では、被告が裁判期日に欠席しても、いわゆる欠席判決とはならず、原告が請求原因事実を立証する必要があります。

したがって、請求原因事実のすべてを証明するのに十分な証拠を提出する必要があります。

具体的には、賃貸借契約書のほかに、陳述書を作成し、証拠として提出することが必要になります。賃料が不払いになっていることを示す、通帳を証拠として出すことも有効です。

陳述書とは、あなたが被告に賃貸をして物件を引き渡したが、賃料が不払いになり、連絡もつかず、行方不明になっているという一連の経過を説明するものです。

少し長くなったので、続きは別記事で説明します。

-不動産明渡訴訟, 訴状

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