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敷金返還請求訴訟

床(フローリング、クッションフロア、畳)の原状回復に関する裁判例

投稿日:8月 14, 2020 更新日:

洋間の床でも、フローリングとクッションフロアで、減価償却に関するガイドラインの解説が異なっています。フローリングは板張りの床のことで、クッションフロアとは、塩ビのシート張りの床のことです。フローリングのような模様のクッションフロアだと紛らわしいので、区別に注意が必要です。

ガイドラインでは、フローリングについては、基本的に耐用年数による減価償却としていません。ただし、全面張り替えをする場合には、建物の耐用年数に準じて償却するものとしています。

クッションフロアについては、6年で償却することになっています。

フローリングは、部分的に張り替えることができますが、材料の最小ロットなどの関係で1m2を最小単位としています。クッションフロアは、洗浄で対応できない場合は、部屋全体の張り替えとなります。

畳については、畳表の交換の場合、消耗品であるとの理由で耐用年数を考慮しません。しかし、畳自体を交換する場合には、6年の耐用年数を考慮することになります。しかしこのように考えると、6年経過した畳であれば、価値がゼロになりますから、畳表の交換費用を賃借人が負担すると言うのは、チグハグな結果になってしまうように思います。畳自体の耐用年数が経過しているので賃借人の負担はゼロであるとするのが(5)の事例です。しかし(6)のように、畳表の交換費用を賃借人の負担とするとの事例も存在します。

(1)
フローリングの補習費用の全額が賃借人の負担とされた事例

裁判年月日 平成31年 2月 4日 裁判所名 前橋簡裁

本事例は、フローリングだった床の損傷のため、全面的な張り替えを行った事例ですが、安価なクッションフロア貼りでの補修をしたことから、その全額が賃借人の負担と判断されました。ガイドラインは、全面の張り替えを行う場合は、建物の耐用年数により減価償却分を考慮するものとされています。本事例の建物の耐用年数は不明ですが、安価な方法が取られていることで全額が賃借人の負担とされたものであり、フローリングの張り替えをする場合には耐用年数の経過を考慮していたはずです。

当事者の主張は次のようなものでした。

賃貸人
たばこのヤニ,換気不足に基づくカビの発生等による著しい汚れが認められ,いずれも張替えを要するが,クッションフロア貼りに要する費用の請求に留める。

賃借人
本件建物は,昭和61年7月12日築であり,築31年以上経過していることから,床及び壁等の価値はゼロである。

裁判所は次のとおり判断しました。

ダイニングキッチンのフローリングについては,たばこのヤニ,換気不足に基づくカビの発生等による著しい汚れが認められ,これらは通常の使用によるものとは認められず,賃借人の善管注意義務違反によるものと認めるのが相当である。そうすると,その張替費用の一部を賃借人が負担すべきものと解されるが,賃貸人は,フローリングの張替に代えて,クッションフロア貼りによる補修とし,それに要する費用を請求しており,フローリングの張替に比較し,低廉な金額に留まるのであるから,クッションフロア貼りの費用2万7000円を賃借人が負担するのが相当である。

(2)
フローリングの張替え費用が賃借人の負担とされた事例

裁判年月日 平成31年 1月18日 裁判所名 東京地裁 

本事例は、賃借人がフローリングに置き物を落としてフローリング下の床暖房装置を損傷したため、床暖房の修理のためにフローリングを全て張り替えることになったというものでした。裁判所は、フローリングの張り替え費用を賃借人の負担としました。具体的な負担額の算出の計算式は、以下のように判断しました。

賃貸人は、リビングダイニングのフローリング張り替え費用として60万円を支払っているところ,リビングダイニングのフローリングは平成24年11月に張り替えられていることが窺われることからすれば,賃借人が負担すべき原状回復費用は53万3333円(60万円×320月÷360月)となる。

裁判所は、フローリングの耐用年数を30年とみて、残存価値を算出しているようです。

(3)
フローリング補修費用の一部が賃借人の負担とされた事例

裁判年月日 平成28年12月20日 裁判所名 東京地裁

ガイドラインは、フローリングについて建物耐用年数に準じて減価償却をするものとしています。

本事例は、(1)の事例と同じく、フローリングの交換の代わりに、上からクッションフロアを貼って代用したという補修方法が選択された事案で、裁判所は、賃貸人の主張を全面的に認める形で、フローリングの張り替えにかかる費用の10分の1の金額を賃借人の負担としました。判決文から、建物の耐用年数は明らかではありませんので、ガイドラインに従った場合の金額の算定はできませんが、算定方法の一事例として参考になるものです。

裁判所が認定した損傷の状況と金額の根拠は次のようなものでした。

本件物件の1階台所及び脱衣所の床には賃借人が付けたと思われる割れ傷が存在した。また,1階台所の床の上には,長年放置されたことによって剥がすことが困難な雑誌の張り付きが広く数箇所存在し,また,焼け焦げのような損傷も存在した。そのため,賃貸人は,本来であればフローリング全体の交換が必要であり,その修繕に15万円を要するところを,これらの床の上に木目調のクッション材(クッションフロア)を上から張ることで代用し,その費用として2万0700円を支出した。賃借人は,少なくとも本来の修繕費の10分の1に当たる1万5000円を負担すべきである。

(4)
耐用年数を経過したクッションフロアの残存価値を10%とした事例

裁判年月日 平成28年 8月19日 裁判所名 東京地裁

ガイドラインでは、クッションフロアの耐用年数を6年としていますが、入居期間だけでも12年経過している事案で、裁判所は、以下のように述べて、裁判所は残存価値を10%とみて、その半額を賃借人の負担としたものです。

クッションフロアについて,そもそも通常使用がされていた場合の残存価値は再施工費用(2万8000円)の10%と見るべきところ,本件居室内部の写真からうかがわれる賃借人の使用状況に照らすと,その半分である5%について賃借人の負担とするのが相当である。

(5)
畳床の耐用年数が経過し減価償却を終えていることから賃借人の負担を認めなかった事例

裁判年月日 平成31年 2月 4日 裁判所名 前橋簡裁

畳表については、消耗品として減価償却を考慮しないのがガイドラインの基準です。本事例で、裁判所は、畳表の損傷は通常損耗ではなく、賃借人が原状回復義務を負うと判断しましたが、結論としては、畳床(畳の芯になる部分)の減価償却が終わっており、畳自体を交換しているので、賃借人の負担を認めませんでした。なお、ガイドラインは、畳床の耐用年数を6年としています。

当事者は、以下の通り主張していた事案でした。

賃貸人
① 既存畳処分 10.5畳 2万1000円
② 畳交換 10.5畳 10万5000円
畳11枚すべてに汚れが認められ,裏返し使用,表替えでは対応できず,全部の撤去を要し,新調を要する。

賃借人
本件建物の畳、畳床は,価値がゼロである。畳床は減価償却を終えている。
畳(6畳)の汚損及び巾木の朽廃については,階上からの漏水によるもので,賃借人に責任はない。

裁判所の判断は次の通りでした。

退去時における畳表及び畳床の損耗・汚損状況は,通常の使用に伴い生ずる損耗を超えるものと認めることができる。しかし,8年以上の居住による減価償却を考慮すると,畳表及び畳床の残存価値はゼロというべきである。そうすると,既存畳の処分及び畳交換の費用計12万6000円を賃借人が負担すべき理由はない。

(6)
畳表の張り替え費用を賃借人の負担とした事例

裁判年月日 平成28年 9月 1日 裁判所名 東京地裁

ガイドラインにおいて、畳表の原状回復費用については、消耗品であることから耐用年数を考慮しないものとされています。また、負担の範囲は、色合わせなどの理由で複数施工する場合も、一枚単位で賃借人の負担となるものとされています。本事例は、このようなガイドラインに沿った判断をした事例です。

本件建物の和室の畳1枚の表面にかびが生じ、広範囲にわたって黒い染み状の汚損が生じており、賃貸人は、本件畳を含む和室の畳4.5帖分の表替え費用として合計2万0250円(1帖当たり4500円)を支払った。上記汚損は、その範囲及び程度からすると、通常の使用から生じ得る程度を超えているものと認められるところ、賃借人は、このような汚損が生じた原因について、地震の際に金魚の水槽の水がこぼれたのが原因であって、当時こぼれた水をきれいに拭き取ったのであるから、故意又は過失によって生じた損傷ではないと主張する。しかしながら、水槽の水がこぼれた後、本件畳の上にカーペットを敷いて生活していたというのであるから、本件畳にかびが発生し、染みとなったのは、賃借人が本件畳を十分に乾燥させないままカーペットを敷いたために、本件畳に染みこんだ水分が内部にこもり、湿気が拡散しなかったことが原因であるといえ、賃借人の故意又は過失によって生じたと認めるのが相当である。したがって、賃貸人が支払った畳の表替え費用のうち、本件畳1枚分に相当する4500円は、賃借人が負担すべきである。

その他の補修部位別の裁判例
 (1)ハウスクリーニング特約
 (2)壁、クロス
 (3)床、フローリング、クッションフロア、畳
 (4)建具、ドア、襖、窓など
 (5)キッチン、ユニットバス

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