請求の原因とは
請求の原因とは、金銭の支払や不動産の明け渡しを求める権利が存在することを根拠づける事実関係です。
法律の内容は、要件と効果で説明されます。たとえば、貸金返還訴訟において、①金銭を交付したこと、②返還を合意したこと、③弁済期日の合意、④弁済期日の到来、という4つの要件を満たしたときに、「貸金返還請求権」が認められるという効果が発生するのです。
したがって、どのように頼まれてお金を貸したのかとか、なぜ被告が返済できなくなったのかとか、嘘をついて返済を先延ばしにしているとか、といった事情は、本来、請求の原因に記載すべきことではありません
請求原因に余分なことを書いてはダメ?
しかし、難しく考える必要はありません。このような本来の請求原因ではない情報が書かれていたからと言って、訴状として受け付けてもらえないと言うことはありません。
ただ、事情が長々と書かれているのに、肝心の要件に当たる事実の記載がないとなると、訴状の補正を求められることになってしまいます。
裁判所は、まず、請求原因の整理をします。その整理のために邪魔な余分な記載が多すぎると、あなたがちょっと変わった人で、粘着質、クレーマー気質、過剰な権利意識の過剰な人物といった先入観をもたれる恐れすらあります。
被告の反論の機会のない訴状の段階で、長々といかに被告が悪質であるかを論じても、あまり有効ではありません。要件事実が端的に記載されていることが、その何倍も重要なのです。
評価は裁判所が行う
評価は裁判所が行うとはどういうことかというと、請求原因に記載すべきことは、事実であって、評価ではないと言うことです。
たとえば、債務不履行による損害賠償請求の請求原因で有効な主張は、
「被告は、詐欺的手段を講じて、原告を翻弄し、いかにも資産家を装っているが、真実は、5年前には、窃盗事件を起こして逮捕された経歴もある者であり、原告のほかにも多数の被害者が泣き寝入りを余儀なくされ、被告の行為は、このような被害者の基本的人権を・・・」などというものではありません。このような記載は、公開の法廷で陳述する主張書面としては、不適切である以上に、被告に対する名誉毀損といわれてもおかしくありません。
請求原因の主張として必要なのは、債権の根拠となる契約の存在と、それに基づく債権が履行期を過ぎているというものです。
被告に債務不履行責任があるか否かは、裁判所が決めるべき結論であって、あなたが主張すべきなのは、結論ではなく、その根拠です。根拠となる「事実」が主張立証されてはじめて「債務不履行である」という法的評価が付いてくるのです。
請求の原因に記載すべき事項は、紛争類型別のマニュアルの記事に詳しく解説しますので、そちらをご覧下さい。
参考になりました。